第7回アーカイブ

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過去の記録

第7回 米子漫画茶会


 ゲスト:貝本正紀(かいもと まさき)
映像制作会社 アマゾンラテルナ鳥取大山オフィス 代表
まるごと一軒こどもの遊び場「YOTTE」管理人

とまる

1975年生まれ。早稲田大学卒業後、東京に本社を置く映像制作会社アマゾンラテルナに入社。NHK、テレビ朝日などのバラエティやドキュメンタリー番組を手掛ける。取材で訪れた鳥取県大山町で住民が地域のために奮闘する姿を見て、テレビの力で応援したいと移住を決意。2015年鳥取県大山町にサテライトオフィスを設立し、町営ローカルテレビや鳥取県の魅力を発信するP R動画を制作する。
2020年、海の見えるコワーキングスペースTORICOをオープン。また、空き家を活用した「まるごと一軒こどもの遊び場 YOTTE」も運営する。T Vゲーム、まんが、宿題など、小中学生が自由で気ままに過ごせる居場所づくりを進めている。5児の父。

会場の様子

 今回も貝本さんのプロフィール紹介から開演。氏が住む大山町の魅力を語り、自身が開設する「まるごと一軒こどもの遊び場 YOTTE」にある漫画コーナーに協力した、ソムリエ・Galleryとの関りを説明。そしてお話は本題へ。
 
1部「漫画と私」
 貝本さんと漫画との出会いは小学生。電車通学をしていた氏は、週刊少年ジャンプなどの漫画誌を、網棚などから拾って読んでいたとか。
特にハマった漫画第1号は、友達の家で読んだという『硬派銀次郎』(本宮ひろ志)だった。主人公・銀次郎の生き様がカッコいい。持ち前の硬派な気持ちに火が付いたという。重ねてその頃は硬派な教師になりたいと思っていたと語る。
それからはヤンキー漫画にハマり『湘南爆走族』(吉田聡)『ろくでなしBLUES』(森田まさのり)など、当時人気の作品を通読。成人してからは『BADBOYS』続編の『BADBOYS グレアー』(田中宏)などを読んでいたそうで、ヤンキー漫画に感じる魅力とは、喧嘩どうこうではなく、主人公たちの熱い生き方に共感して、と解説。

漠然とある社会への不満などのイラつきに対して、その漫画の世界に入ることでスカッとしていた。田中弘作品は同じキャラが成長して別の漫画に出てくるので、一緒に成長している感じがするとも語った。
ここでソムリエは週刊少年ジャンプ、少年サンデーのヤンキーはファンタジー(誇張やギャグ)寄り、少年マガジン、少年チャンピオンはガチ不良漫画が主流と分析。貝本さんは敵との和解も魅力と語る。少年ジャンプのヒーロー漫画にも多い展開だと赤井。対立したうえでの和解にはカタルシスがある。ヤンキー漫画、ヒーローマンガともに大きな魅力のひとつだろう。
大学生で『賭博黙示録カイジ』『アカギ〜闇に降り立った天才〜』『銀と金』『天 天和通りの快男児』(福本伸行)などにハマる貝本さん。奈良の田舎から東京に上京した彼は、ギャンブルにハマったりして落ちこぼれていったという。そこでこれらの漫画群を読んで、そこにヒーロー性を感じた。ヤンキーの「体力」とは違い「頭脳」でのし上がっていく姿がかっこよかったという。何よりもセリフが良いと貝本さん。彼が手掛ける大山チャンネルの番組作りも、清く正しく美しくだけだと、はじき出されてしまう住民もいるので「完ぺき」ではない人々の魅力を意識しつつ番組を作っているそうだ。「人間味」が大切なのだ。

2部「リコメンド漫画」
さて今回ソムリエが紹介する漫画は、週刊少年ジャンプ創成の立役者(作品)「男一匹ガキ大将」(本宮ひろ志)。喧嘩に勝って仲間を増やしていく漫画の元祖であることに加え、経済漫画としての側面も併せ持つ。『サラリーマン金太郎』など、後の本宮漫画の原点でもあるという。
富士山の裾野で東西の不良が集まり大規模な頂上決戦が行われる本作、主人公の戸川万吉はそこで死ぬ予定だったが、編集部からの要請で物語は続くことになり「その後もズルズルと続いていく漫画」の元祖でもあるそうだ。

会場の様子

続いては『熱笑花沢高校』(どおくまん)を紹介。『クローズ』の続編である『WORST』(高橋ヒロシ)に影響を与えている漫画だという。貝本さんも漫画に登場する改造バイクの魅力にハマったそうだ。正義の不良を目指す主人公・力 勝男が、いじめられっ子だった過去を払しょくし、最後は関ケ原の戦いのごとき合戦ともいうべき戦いを制していく漫画だ。ギャグ漫画からシリアスな展開に移行する流れが、『キン肉マン』(ゆでたまご)に近いかなとソムリエ。
3作目は『夕やけ番長』(原作:梶原一騎・画:荘司としお)ヤンキー漫画の前身ともいえる番長漫画の雄を推薦。しかし、ここ漫画ミュージアムには置いてないそうで簡単な紹介にとどまった。そして、そんな系譜の流れは一般作にも多く見受けられる。先ほど解説されたように、物事を成し遂げるカタルシスという点が共通しているからだ。そんな漫画の中でソムリエが紹介するのは『キングダム』(原泰久)。しかし、貝本さんは「みんなが面白いという漫画は、その時には読みたくない派」だそうで。いつになったら落ち着く(終了)のかとソムリエも苦笑い。本作も暴力世界で自己実現。ヤンキー漫画ファンにも訴えるものがあるとソムリエは分析。合戦の描写だけではなく、劇中での舌戦を戦わすシーンが面白いとも。成り上がりの面白さ、戦略戦術の面白さなど、ヤンキー漫画の延長線上に位置するという。
 紹介された作品の中では『熱笑花沢高校』を読んでみたいという貝本さん。押しつけがましいのが嫌いな氏は、啓発ではなく「作者はこう生きたい」という思いを訴えかけてくる漫画が好きなのだという。
 
 恒例となった「質問コーナー」に移り、最後に貝本さんは漫画について2時間話す機会は初めてだったが面白かったと感想を述べた。氏が手掛ける「大山チャンネル」はYouTubeでの配信もあるのでぜひ!